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東京地方裁判所 平成6年(ワ)15868号 判決

原告

清水徹

外五名

右原告ら六名訴訟代理人弁護士

山下清兵衛

被告

興和商事株式会社

右代表者代表取締役

石田鑑三

右訴訟代理人弁護士

杉本秀夫

神﨑浩昭

櫻井義之

山崎宏征

長家広明

高橋勇

宮本孝一

主文

一  別紙物件目録一の一記載の建物のうち、同目録二の一及び二記載の各建物部分が、同目録一の一記載の建物の共用部分であることを確認する。

二  訴訟費用は被告の負担とする。

事実及び理由

第一  請求

主文同旨

第二  事案の概要

本件は、東京都渋谷区渋谷<番地略>所在のマンションである別紙物件目録一の一記載の建物(名称ビラ・モデルナ。以下「本件マンション」といい、その敷地を「本件敷地」という)の区分所有者らである原告らが、本件マンションの分譲業者であるとともに、区分所有者でもある被告に対し、被告が専有部分であるとして所有権を主張している本件マンション地下二階のうち別紙物件目録二の一記載の建物部分(別紙図面一中のAと表示された赤斜線部分。以下「A部分」という)及び同目録二の二記載の建物部分(同じくBと表示された青斜線部分。以下「B部分」といい、A部分と併せ「A・B部分」という)について、それらがいずれも本件マンションの共用部分であることの確認を求めた事案である。

一  争いのない事実

1  被告(昭和二五年六月一六日設立)は、不動産の売買、仲介、賃貸及び管理業並びにステンドグラスの輸出入及び販売業務等を目的とする会社であるところ、昭和四九年八月に本件マンションを建築し、本件マンションの専有部分(本件の係争部分であるA・B部分はここでは考慮の外に措く)の面積の過半数に当たる区分所有建物を所有している。また、被告は、右被告専有部分を除くその余の各専有部分を他に分譲するほか、分譲を受けた各区分所有者との間で建物管理請負契約を締結し、本件マンションの管理業務を行ってきた。

原告清水徹は別紙物件目録一の二記載の区分所有建物、同富士越産業株式会社は同目録三記載の区分所有建物、同山崎滋及び同山崎明夫は同目録四記載の区分所有建物、同加田修及び同松村緑は同目録五記載の区分所有建物をそれぞれ所有している。

2  本件マンションは、鉄筋コンクリート鉄骨鉄筋コンクリート造陸屋根地下二階付一〇階建である。本件マンションの正面玄関は地階部分にあり、右マンションの正面に敷設されている公道(以下単に「公道」という。なお、方位について以下においては右公道の走る方向を基準に東西として表記し、その他の方位もこれに従う)からは、本件敷地中央に設けられた階段を降りて、地階床面と同一平面上で接続する広場様の広場の床面(土部分はなく、表面は三角タイル貼。以下「本件広場床」という)を通って右玄関に入って行く構造となっている。公道を背に向かって右手(本件敷地の西側)には、公道から本件マンションの地下二階へと通じる坂道(以下「本件スロープ」という)が設けられている。A部分は右地下二階の一部であり、B部分は本件スロープの一部である。

3  A部分は、昭和四九年ころから区分所有者らに賃貸され、駐車場として使用されていたが、昭和五六年ころからは、被告が販売業を営むステンドグラス等の保管用倉庫として使用されるようになっている。

被告は、現在、A・B部分が自己の所有に係る専有部分であると主張し、右各部分を排他的に占有している。

二  争点

A・B部分は、建物の区分所有等に関する法律(昭和三七年法律第六九号。以下「区分所有法」という)にいう専有部分か。

三  争点に対する当事者の主張<省略>

第三  争点に対する裁判所の判断

一  前記争いのない事実に証拠(甲三ないし六、八の1ないし4、一七ないし一九、二一、二三、二六ないし三八、四二、乙一〇四ないし一〇七、一一二、一一三、一一五の1ないし4、一一六の1ないし六、一一九ないし一二六)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

1  本件マンション建築の経緯

本件マンションは、被告が昭和四六年二月ころに株式会社坂倉建築研究所に設計を依頼した建物であり、小規模会社の事務所や単身者の居住用に各戸の専有面積を12.85平方メートルから36.16平方メートル、基準室幅2.8メートルという最低限度の大きさにとどめる代わりに、二四時間営業のフロント、集中給湯設備、洗濯室(コインランドリー)、集中管理の冷暖房、リネンサービスなどホテル並のサービスを提供することを特徴とするワンルームマンションである(ただし、被告ないし被告代表者と原告ら区分所有者らとの管理費等をめぐる長期紛争などのため、現在一部のサービスは提供が停止されている)。本件マンションは、昭和四七年一二月の建築確認申請を経て、昭和四八年三月に着工され、昭和四九年七月に完成し、築後二六年を経ているが、採光に工夫し、蜂の巣を想起させる今なお斬新な装いを呈する建物である。

2  本件マンションの構造

(一) 全体の構造

本件マンションは、鉄筋コンクリート鉄骨鉄筋コンクリート造陸屋根地下二階付一〇階建の建物であり、専有部分としては、居宅及び事務所合計一八九戸が公道を背に向かって左側(東側)の東棟及び向かって右側(西側)の西棟のそれぞれ一階から一〇階に、店舗、事務所、応接室等が地階に、倉庫、洗濯室等が地下二階にそれぞれ設けられている。

本件マンションの居住区域は右のとおり東棟と西棟との一階以上に分かれており、右両棟が地階の玄関ロビー及びラウンジ部分、その上部に当たる一階の外部廊下、二階から九階の各階南側にあるブリッジでつながっているため、本件マンション全体は平面図で見ると「コ」の字型をしている。本件マンションの正面玄関に当たる部分は右両棟をつなぐ地階部分にあり、前記のとおり、右正面玄関へは、公道から本件敷地中央に設けられた階段を降りて、本件広場床を通って行く構造となっている。また、西棟の西側には、同棟一階床部分に同一平面で接続する幅約六メートルの避難用人工基盤(バルコニー様の通路)が設置されており、公道から本件スロープの右側(本件敷地の西端)に設置された階段(以下「西側階段」という)を利用すると、右人工基盤を通って、西棟一階の各区分所有建物に直接出入りすることができるようになっている。

本件マンションのうちイ点とウ点とを結ぶ直線(本件スロープの西端線)上には、一階床面相当の高さまで立ち上がる塀(乙一二五。上辺は右人工基盤とは接着していない。以下「本件西側擁壁」という)が築造されている。右擁壁は、西棟から東西方向に走る梁と接続して本件マンションを支えている(乙一一三)。また、ウ、エ、コの各点を結ぶ直線上にも、一階床面相当の高さまで立ち上がる塀(上辺は本件マンションの躯体とは接着していない。以下「本件南側擁壁」という)が築造されている。右擁壁は、ウ点において本件西側擁壁と、コ点において東棟地下二階部分と接着しており、また、西棟から南北方向に走る梁とも接続して本件マンションを支えている(乙一一六の1、一二四)。

(二) 本件スロープ

(1) 本件スロープは、本件敷地西側に位置し、公道から地下二階へと通じるかなり勾配の急な坂道で、その幅は約六メートル、長さ(公道から本件スロープの南端までの距離)は約二九メートル、深さ(公道から地下二階床面までの距離)は約6.4メートル、床面積は一七四平方メートルであり、そのうちB部分の床面積は一二六平方メートルである。

(2) 本件スロープの周辺のうち、公道を背に向かって左側(東側)は西棟の外壁で、向かって右側(西側)の壁面のうちア点とイ点とを結ぶ直線上は西側階段の外壁で、イ点とウ点とを結ぶ直線上は本件西側擁壁で、ウ点とエ点とを結ぶ直線上は本件南側擁壁でそれぞれ囲まれている。

公道を背に向かって左側壁面(西棟外壁)の途中には、本件スロープから地階へと通じる開口部があるほか、カ点とキ点とを結ぶ直線上及びA部分の南側に位置する吹き抜け部分(別紙図面二参照。以下「ドライエリア」という)への入口であるエ点とオ点とを結ぶ直線上には壁のない部分があるが、カ・キ点とA部分の床面とは同一平面ではなく本件スロープの勾配に沿った段差があり、両点の間からはA部分に通常の方法で出入りすることは困難な構造となっている(なお、カ点とキ点の間の部分には、現在被告が棚状工作物を設置して荷物を積み上げているため、実際にも出入りはできない)。一方、本件スロープから公道へと通じるア点とケ点とを結ぶ直線上にも、B部分の北端であるイ点とク点とを結ぶ直線上にも、門やシャッター等の遮断物は設置されていないが、B部分の半ばには被告によって金属製の門が設置されており、これを施錠することにより、外部から地下二階への出入りを制限することができるようになっている。本件スロープのうちB部分を除くア、イ、ク、コ、アの各点で囲まれた部分には天井がなく、上部が外気に開放されているが、B部分は、上部のほとんどが人工基盤により覆われている。ただし、イ点とウ点とを結ぶ直線上にある本件西側擁壁は人工基盤の西端よりも更に西寄りの位置に築造されているため、本件西側擁壁は人工基盤の西端と接着しておらず、その結果、B部分の西端は一部外部への吹き抜けとなっている部分がある。

(3) 公道から、地下二階のA部分へ入るためには、本件スロープを下り、その突き当たり(南端)をほぼ直角に左折した上、南北幅約三メートル、東西幅約23.5メートルのドライエリアを通り抜ける必要があるが、更にドライエリア部分に入って直ぐ左手(北側)に、南北幅約六〇センチメートル、東西幅約六メートルの鉄筋コンクリート柱(以下「右側柱」という)があるため、左折した直後のドライエリアの幅(エ点とオ点との間)は約2.55メートルしかなく、車両の運転者は直角に左折を強いられる上更に狭隘な通路を進行することを余儀なくされる構造となっており、右部分を通行するには相当の運転技量を要する。

(三) A部分

(1) A部分は、本件マンション地下二階のうち、東棟地下二階部分と西棟地下二階部分との間に位置する床面積291.67平方メートルの建物部分であり、別紙図面二のとおり、その南側にドライエリア、東側に機械室、洗濯室、エレベーターホール並びに倉庫一及び二から構成される東棟地下二階部分、西側に電気室及び倉庫三から構成される西棟地下二階部分がそれぞれ隣接し、その中央付近には、ゴミ集積場、ダストシュート及びエレベーターから構成される建物部分(以下便宜「ゴミ集積室」という)が存在している。

A部分とドライエリアとの間には、西側に右側柱があるほか遮蔽物はないが、ドライエリアの南側(エ点とコ点とを結ぶ直線上)は本件南側擁壁、A部分の東側は東棟地下二階部分の壁面、西側は西棟地下二階部分の壁面で、北側のサ点とシ点との間は地下二階の床下から地階の床下へと立ち上がる擁壁(上辺は地階ロビー及び本件広場床下に、下辺は地下二階床下に打設された基盤に接着し、サ点及びシ点でそれぞれ東棟地下二階部分及び西棟地下二階部分と接着している。乙一一六の2、一二四。以下「本件北側擁壁」という)、中央付近に存するゴミ集積室との間はこれを囲むコンクリート壁でそれぞれ区分されており、また上部は地階建物部分の床面及び本件広場床でそれぞれ他の建物部分又は外部と遮断されている。ただし、ドライエリアの上部には地階部分が存在しないため、ドライエリアは幅約三メートルにわたり地下二階から外部への吹き抜けとなっている(なお、現在は、降雨を防ぐため、被告がドライエリアの上部にテントと塩化ビニール製の波板屋根を設置している)。また、A部分と接する右各建物部分の出入口には、いずれも鉄製の防火扉又はエレベーター扉が取り付けられており、これらを閉じることにより、A部分との間を完全に遮断できるようになっている。

A部分の南北幅は最大の箇所で約二一メートル、東西幅は最大の箇所で約23.5メートルであるが、そのほぼ中央付近に東西幅約五メートル、南北幅約四メートルのゴミ集積室が存在するため、A部分のうちゴミ集積室より西側の幅は狭くなっている。また、A部分の北側及び東側部分には、本件マンションを支える0.7メートル平方の構造柱が四本、等間隔で建造されている。

(2) A部分に隣接する東棟地下二階部分(床面積約206.45平方メートル)は、別紙図面二のとおり、その北側半分を共用部分である機械室で占められており、そのほか共用設備であるエレベーター、共用部分であるエレベーターホール、被告の専有部分である洗濯室、倉庫一及び倉庫三(ガスボンベの保管庫)から構成されており、A部分から同建物部分へは機械室及びエレベーターホールの出入口を通じて出入りすることができる。倉庫一内には上階へと通じる階段があり、同部分が非常口とされているため、地下二階で火災等の緊急事態が生じた場合、A部分、ゴミ集積室又は西棟地下二階部分内にいる者は、誘導灯に従って、A部分から東棟地下二階部分内のエレベーターホールを通り、右階段を使用して避難することとされている。

機械室内には、本件マンションの全区分所有建物へ給湯するためのボイラー及び給水槽が設置され、終日ボイラー作業員が滞在しており、同室は主にボイラー室として利用されている。また同室の床には、地下二階の床下に設置されている複数の受水槽へと通じるマンホールが四つある(乙一一六の2)。

洗濯室は、分譲当初は本件マンションの各区分所有者らが使用できる有料のコインランドリーとして利用されていたが、現在は廃止され、右機械室で勤務するボイラー員の休憩場所として使用されている。

(3) A部分に隣接する西棟地下二階部分(床面積約80.53平方メートル)は、別紙図面二のとおり、共用部分である電気室及び被告の専有部分である倉庫三から構成されており、A部分から同建物部分へは電気室及び倉庫三の出入口を通じて入ることができる。西棟地下二階部分内には、直接外部へ通じる通路や階段、エレベーターは存在せず、A部分へ通じる出入口が、西棟地下二階部分への唯一の進入路である。

電気室の内部には、本件マンションの全区分所有建物へ電気を供給するための変電設備が設けられており、電力会社の作業員が電力の保守・点検のために出入りすることがあるが、一般の区分所有者の立入りは禁止されている。また、ス点とセ点との間の壁面には、共用設備である引込開閉器盤及び電気メーターがある。

(4) ゴミ集積室(床面積約15.44平方メートル)は、別紙図面二のとおり、共用部分であるゴミ集積場、ダストシュート及びエレベーターから構成されており、ゴミ集積場へはA部分へ通じる出入口が唯一の出入口である。また、エレベーターは本件マンションの各階の廊下に通じており、各階からエレベーターを利用して直接A部分に入ることができる。

本件マンションにおいては、各区分所有者が出すゴミは各階からダストシュートを通じてゴミ集積場へと集められ、ゴミ収集車が回収に来る直前にまとめて公道に出す仕組みとなっており、右ダストシュート及びゴミ集積場は全区分所有者らのために使用されていた。なお、ゴミ集積場は、被告が本訴提起後の平成七年ころにダストシュートを閉鎖したため、現在は利用されていない。

(5) A部分の天井部分には、ほぼ全面にわたって、給水管(揚水管、膨張管)、冷却水(往管、還管)、ドレーン管など本件マンションの各区分所有者の生活に不可欠な共用設備が縦横無尽に張りめぐらされている。また、A部分の床下には、受水槽・汚水槽・排水槽・エレベーターピットなどの共用設備が設けられている(乙一二九)。

3  A・B部分の公簿上の表示等

被告は、本件マンション完成直後、東京法務局渋谷出張所に対し、同マンションの専有部分と共用部分とを分けて登記申請し、その際、A部分についてはこれを専有部分として登記手続をしようとしたが(乙一一九)、周囲が完全に遮断されていないという理由で右登記申請が受け付けられなかったため、本件マンションの地下二階の床面積に東棟地下二階部分、西棟地下二階部分及びゴミ集積室のみを算入することとし、A・B部分及びドライエリアの床面積を延床面積に含めずに登記を了した。被告は、同じころ、都税事務所に対しても、本件マンションの専有部分と共用部分とを分けて建物取得届をしたが、その際もA・B部分を本件マンションの延床面積に含めた申告をしなかった。

4  A・B部分の利用状況の推移

被告は本件マンションの設計段階において、A部分を車両一二台分の賃貸用駐車場(倉庫三と右側柱との間に二台、電気室入口の南側に二台、機械室と電気室の間に三台、東棟地下二階部分の西側に五台)、B部分を右駐車場へ通じる出入路として利用しようと考え(乙一一六の2、一二一、一二九)、分譲する際に配布したパンフレット(甲三)記載の配置図にも、地下二階のうちA部分に当たる部分を「駐車場」、B部分に当たる部分を「スロープ」と表示し、区分所有建物の買受人らとの間で締結した管理請負契約に係る管理規約(甲二三、乙一一二)にも、右駐車場が被告の専有部分である旨の規定を設け、本件スロープの壁面にもその旨を掲示した。

被告は、本件マンション完成後実際にはA部分のうちゴミ集積室から西側の部分に駐車をすることは困難であることが判明したため、ゴミ集積室よりも北側及び東側の部分を車両七台分の駐車場として利用することとし、昭和四九年ころから右七台分の駐車用スペースの一部を本件マンションの区分所有者らに賃貸し、一部は自ら使用するようになった。しかしその後、車両が本件スロープを下り、鋭角に左折してドライエリアへと進入する際に、通路が狭すぎて車両が傷つく事故が相次ぎ、駐車場としての利用を希望する者がいなくなったため、被告は昭和五九年ころからA部分の駐車場としての利用を廃止して、同部分を自社の販売するステンドグラスの保管用倉庫として使用することとし、一方的にB部分半ばに金属製の門を設けた上これに施錠して一般の区分所有者らの出入りを禁じ、A部分には多数のステンドグラスや作業用機械を電気室や機械室の前にも積み上げ、本件スロープには自社の車両や物品を置くなどして、A・B部分を倉庫として排他的に使用、占有するようになり、現在に至っている。

二  区分所有法一条によれば、ある建物部分が専有部分であるというためには、当該建物部分が構造上他の建物部分から区分され(構造上の独立性)、かつ、独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができる(利用上の独立性)ことが必要とされているところ、A・B部分が右要件を満たしているものかについて以下前記認定事実を前提として判断する。

1  A部分について

(一) 構造上の独立性の具有について

(1) 前記認定によれば、A部分(なお、地下二階の構造上、ドライエリア自体が独立の建物としての機能を有するものでないことは明らかであるから、ドライエリアはA部分と一体の建物部分と解するのが相当であり、以下においては、これを前提として、A部分とドライエリアとを併せた建物部分についての構造上の独立性を検討する)は、その四方を本件マンションの構成部分である壁や擁壁で、上部は地階建物部分の床下及び本件広場床で、下部はコンクリート打ちの床面でそれぞれ囲まれ、その範囲は東棟地下二階部分、西棟地下二階部分、本件敷地、地階及び地下二階床下との間で明確に区分されているから、A部分は、一応構造上の独立性を有しているものと認めるのが相当である。

(2) 原告らは、A部分の周辺を囲む遮蔽物のうち、本件南側及び北側擁壁は本件敷地の土留めのための工作物にすぎず、本件マンションの構造壁ではないから、A部分には構造上の独立性がないと主張するが、本件北側擁壁は地下二階の床下にまで達して、本件マンション全体を支える基盤と接着し、左右で西棟地下二階部分及び東棟地下二階部分とも接続しているものであり、また本件南側擁壁は西棟から南北方向に走る梁と接着して本件マンションを支え、東棟地下二階部分とも接着しているのであるから、本件マンションを構成する建物部分であると解するのが相当というべきである。したがって、原告らの右主張は理由がない。

(二) 利用上の独立性の具有について

(1) A部分は、その構造上複数の共用部分と接し、そのうち電気室及びゴミ集積場への唯一の出入口となっており、特に、ゴミ集積場からのゴミを公道へと持ち出したり、A部分に設置されている共用設備を管理する専門業者が出入りするための通路となっている。また、A部分を通らなければ外部へは出られない構造となっている倉庫三は、被告の専有部分となっているところ、仮にA部分が専有部分であるとすると、倉庫三は、外部へ通じる出入口を有しないことになり、利用上の独立性を有しないことになる。しかも、A部分は、西棟地下二階部分及びゴミ集積室から東棟階段へと避難する際の避難通路にもなっているほか、A部分の天井には、ほぼ全面にわたり給水管等の配管が広範囲にわたって張りめぐらされており、それらの保守点検のための空間として重要な機能を有している。

以上の事実に加え、被告はA部分を本件マンションの延床面積に含めないで登記及び建物取得届をし、同部分についての固定資産税をも負担していないことをも考慮すれば、A部分は、外部から東棟及び西棟へ、両棟及びゴミ集積室から外部へ、又は両棟相互へ出入りするための通路並びに地下二階に設置されている様々な共用設備の補修・管理をするための区画として機能すべきものであり、本件マンションの区分所有者全員の利益のために必要な建物部分であると認めるのが相当である。そして、A部分の構造、面積、形状、機能、管理の必要性及びその他の事情に照らして考えれば、右建物部分を専有部分として排他的使用に供した場合には、区分所有者等の利用に支障を来すものというべきである。

(2) これに対し、前記認定によれば、A部分は、本件スロープを通じて直接外部に通じている建物部分であり、同部分は、本件マンションを分譲する際のパンフレット及び管理規約には駐車場として表示され、一時期実際に駐車場として使用されていたのであるから、同部分は独立して駐車場としての用途に供することができる建物部分であるという余地がないではない。

しかし他方、A部分は、外部から車両で進入するためには、勾配の急な本件スロープを下った後、幅約六メートルの同スロープを直角に左折し、約2.55メートルの幅しかない右側柱と本件南側擁壁との間のドライエリアへと進入しなければならない構造となっており、駐車場として備えているべき規模の進入路を欠いているといわざるを得ない。また、その内部も、中央付近に東西幅約五メートル、南北幅約四メートルのゴミ集積室が位置するため、ゴミ集積室よりも西側に車両を駐車することがそもそも困難であり、東側においても、等間隔に設置された柱があるため、車両の通行が容易ではない構造となっている。そのため被告は、当初A部分を車両一二台分の駐車場として利用しようと考えていたにもかかわらず、実際は西側を除いた七台分の駐車スペースしか利用することができず、その七台分も、A部分を利用する際に車両を傷つける者が続発し、同部分の利用を希望する者がいなくなったため、間もなく駐車スペースとしての利用を廃止するに至ったものである。

右のようなA部分の構造及び利用状況にかんがみると、同部分はそもそも当初から駐車場として当初被告が意図していたような規模も構造も備えてはいなかったのであり、同部分の駐車場としての用途は、極めて限定的なものであったものといわざるを得ない。

(3) なお、A部分は現在被告の商品の保管用倉庫として利用されているから、同部分が独立して倉庫としての用途に供することができる建物部分であるか否かも問題となるが、同部分はそもそも倉庫として設計されたものではないし、倉庫であれば、通常、物品が安全に保管されるよう専有者以外の者が自由に出入りすることができないような構造を有するべきであり、駐車場以上に建物の遮蔽性が重視されるべきものであるところ(被告も現在本件スロープ途中に設けられた門に施錠し、カ点とキ点の間の部分には棚状工作物を設置して荷物を積み上げるなどして、区分所有者ら、その他の者らの立入りを事実上禁止している)、A部分は、ゴミ集積室のエレベーターを通じて各階から直接その内部に出入りできるようになっており、またドライエリアには上部空間との遮蔽物がなく、風雨を防ぐことができないなど(そのため被告は独自にドライエリア上部にプラスチック波板などを取り付けている)、倉庫として通常備えるべき構造を有していない。また、A部分は、現在倉庫として施錠されているが、そのため、共用部分であり、A部分が唯一の出入口となっているゴミ集積場は利用できなくなっている。また、保管されている物品が電気室や機械室へと通じるドアの前にまで山積みされているため、右各共用部分への出入りが困難な状態であるし、A部分内に設置されている共用設備である引込開閉器盤、電気メーターや各種パイプ類の修理・保管のために専門業者がA部分内に立ち入って作業することも困難な状況であり、共用設備の保存に多大な支障を来している。

以上によれば、A部分が独立の倉庫の場合と実質的に異なることのない態様で倉庫として排他的に使用できる建物部分であるとは解されないし、倉庫として使用した場合には区分所有者全員の用に供すべき共用部分及び共用設備の利用をも妨げるおそれがあるものであるから、A部分は、倉庫として独立した建物としての用途に供するには適していない。

そのほか、A部分は、その構造上、店舗、住居、事務所などの用途に供するのにも適していないと認められる。

(4) 以上検討してきたところを併せ考えれば、A部分は、独立して駐車場又は倉庫その他建物としての用途に供するには適しておらず、その機能としては、部分的に車両を駐車することが可能としても、被告の意図したところはともかくとして、本来的には地下二階の共用部分及び専有部分への通路ないしそれらの機能のために用意された空間部分と考えるのがA部分の構造に適い、合理的であるというべきであるから、A部分は、本件マンションの区分所有者の利益のために必要な建物部分に当たるものとして、利用上の独立性を有していないものと解するのが相当というべきである。

(三) 以上によれば、A部分を専有部分と認めることはできない。

2  B部分について

前記認定によれば、A部分は、共用部分として区分所有者全員の利用に供されるべき建物部分であるところ、本件スロープは、設計当初からA部分への通路とすることが予定され、実際、建築後も被告が本件スロープに駐車や物品の保管を始めるまでは同部分への通路として使用されてきたものであるから、B部分は、共用部分であるA部分及びドライエリアと機能的に一体であり、本件マンションの区分所有者全員の共用に供されるべく造られた建物部分として利用上の独立性を有しないことが明らかである。

したがって、B部分も専有部分といえないことが明らかというべきであり、この点の被告の主張も理由がない。

3  よって、原告らの被告に対する本訴請求は理由があるから認容することとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官・藤村啓、裁判官・髙橋譲、裁判官・山田麻代)

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